紙と電子は読者が読む場面から選ぶ

家の本棚に作品を残したい人も、移動中に端末で読みたい人もいます。電子書籍を併用する目的は、読み方の選択肢を用意することです。知人へ贈る紙の本と、遠方の読者が入手する電子版を、それぞれどう案内するか考えます。

電子版には物理的な保管場所が要りませんが、原稿の整理、表紙、表示確認は必要です。紙版を作ったからといって、その印刷用データが電子版としてそのまま読めるとは限りません。別の読書環境へ整える制作工程を予定に入れてください。

文章中心ならリフロー型の読みやすさを試す

リフロー型は、画面や文字サイズに合わせて文章の配置が変わる形式です。長い地の文を読む小説では、読者が見やすい文字に調整できる点が役立ちます。紙のページ割りより、段落と章のつながりを保つことを重視します。

固定レイアウト型は文字と図版の位置関係を保つ形式です。手紙の紙面そのものが手掛かりになる推理小説など、配置に意味がある作品では検討の余地があります。ただし、画面が小さいと文字も小さくなるため、拡大して読む負担まで確かめます。

本文はリフロー型にし、作中の文書を画像として載せる案も考えられます。画像の文字が読めるか、内容を本文でも補えるかを確認します。形式を決める前に、作品で最も表示が難しい場面を試作し、制作担当者と判断しましょう。

縦書きとルビは変換後の画面で確かめる

原稿に縦書きを指定しただけでは、配信先での仕上がりを確定できません。対応する形式や表示環境を確認し、変換後のデータを開きます。ルビが親文字から離れていないか、傍点が狙った文字に付いているかを見ます。

長いルビや外国語、会話中の記号は確認箇所として控えておきます。文字を拡大した場合と、画面の向きを変えた場合も読みます。物語の途中で読みにくさが出る場所を探すため、冒頭だけでなく、表記が込み入った場面まで確認してください。

空行や空白を重ねて作った場面転換は、表示の変化で意図が伝わらなくなることがあります。改段落なのか、時間や場所の切り替えなのかを原稿で区別します。章へ移動する目次も使い、移動先が題名や本文の適切な位置になっているかを確かめましょう。

PODは紙の本を必要に応じて作る方法

PODは、必要に応じて印刷する方法です。注文に応じて製造する販売サービスなら、販売用の本を先に大量に持つ負担を抑えられます。電子書籍とは異なり、読者が受け取るのは紙の本なので、本文と表紙には印刷向けの準備が必要です。

縦組みの小説では、綴じる方向、余白、選べる判型を確かめます。紙や製本の選択範囲は依頼先によって異なります。手渡し用に作る本と同じ装丁を再現できると決めず、見本の作成方法と実物の確認手順を聞いてください。

著者がイベントへ持参する分を手配するなら、注文から受け取りまでの流れも必要です。制作費と販売時の印刷費の考え方は、自費出版ガイドのPOD解説にまとめています。サービス名だけで在庫や発送の担当を判断せず、契約する範囲を読みましょう。

配信先を選ぶ前に独占条件と利用範囲を読む

KDPなど、著者自身で出版手続きを進めるサービスを使う方法もあります。原稿の登録だけでなく、販売情報、受取条件、修正や公開停止の方法まで確認します。紙版の書店流通と電子版の配信では、売上の仕組みが同じとは限りません。

独占配信を伴うプログラムを選ぶ場合は、投稿サイトへの掲載との両立を確認します。KDPでも通常の出版と任意の独占プログラムを混同しないようにします。期間や例外を含む最新の規約を読み、自作の公開状況を照らしてください。

表紙のイラストや作中の地図を依頼した場合は、電子版と宣伝にも使えるかを確認します。本文の権利を持っていても、すべての素材を同じ条件で使えるとは限りません。確認した回答を原稿と一緒に保管しておきます。

紙版と電子版を更新するときの原稿を決める

お手軽出版ドットコムには電子書籍オプションがあります。対応する配信先や制作範囲、費用はオプションの案内で確認し、自分で担う作業を相談してください。電子版のみの依頼やPODの併用可否も、同じものとして扱わず確認します。

誤字を直すときは、紙版の修正だけで終わらず、電子版の元原稿にも反映します。媒体ごとに別の結末や加筆があるなら、どの版に何を収録したかを一覧にします。読者への説明と、次の改訂時の取り違え防止に役立ちます。

制作の基本は自費出版ガイドの電子書籍解説も参照できます。まずは自作の会話文、ルビ、場面転換を含む箇所を選び、電子版と紙版でどの読み心地を優先するか決めましょう。