自分の文章と借りた表現を原稿で区別する
小説の原稿を読み返し、他人の文章、歌詞、詩歌、画像などを使っている箇所に印を付けます。調べた事実を自分の言葉で書くことと、資料の表現を移すことは分けて確認します。下調べのメモを、そのまま地の文に入れていないかも見直しましょう。
登場人物が本を読む場面や、章の冒頭に置く言葉にも他人の著作物が含まれます。本文から離れた扉や帯、紹介用の画像も確認の対象です。原稿の完成後に探し直すより、出典と使用箇所を執筆中から記録すると相談を進めやすくなります。
引用は出典を書くだけで成立するものではない
文化庁の解説では、引用には公表された著作物であることが必要です。公正な慣行に合い、引用の目的に照らして正当な範囲であることも求められます。引用部分を明確に区別し、本文との関係や必要性を検討したうえで、適切に出所を示します。
物語の雰囲気を出すために、好きな文章を飾りとして置く場合もあります。しかし、それだけで引用の条件を満たすとは限りません。「短ければ使える」「著者名を付ければよい」という判断をせず、場面の中でなぜその表現が必要かを考えます。
引用と考えている箇所は、前後の本文も含めて相談します。必要性や分量は、抜き出した言葉だけでは判断しにくいためです。一般的な説明は自費出版ガイドの著作権記事も参照し、個別の適法性は専門家へ確認してください。
歌詞・俳句・短歌は短いことを理由に使わない
歌詞や短い詩歌では、わずかな言葉でも作品の中心的な表現を含むことがあります。登場人物に歌わせる、手紙の中に書く、章題の下へ載せるといった使い方を整理します。販売しない本や小部数の本なら自由に載せられる、と一律に考えないようにします。
利用を希望する場合は、権利を管理する窓口や権利者に必要な手続きを確認します。使う箇所、紙か電子か、販売や宣伝への利用予定を伝えます。保護期間が関わる作品も、古いという印象だけで扱いを決めず、原作と翻訳などの関係を確認してください。
その言葉を直接載せる必要が薄ければ、人物が歌を聞いてどう感じたかを書く方法もあります。歌詞を少し言い換えて残すのではなく、場面で描きたい感情や動作に立ち戻ります。許諾を待つ箇所は担当者と共有し、未確認のまま校了しないようにしましょう。
実在の人物は名前を変えても特定され得る
モデル小説では、経歴、職業、家族構成、出来事の組み合わせから人物がわかる場合があります。仮名にすることや「フィクション」と記すことだけで、名誉やプライバシーの問題がなくなるとは限りません。実在の人物を否定的に描く場面は、特に掲載の必要性を検討します。
実際の地名を舞台にすることと、実在の企業や店に不正行為をさせる描写も、同じものとして扱わないようにします。読者が現実の事実と受け止めるおそれがあるか、作品外の紹介文を含めて確認します。調査した資料と創作した設定を区別しておきましょう。
私生活を題材にした小説では、家族や知人の語った出来事にも目を向けます。自分の体験の一部であっても、他人の公開したくない情報が含まれます。判断に迷う記述は、誰が特定され得るかと原稿を示し、法律の専門家へ相談してください。
二次創作は原作品の権利と利用条件を確認する
他作品の人物や世界を使う二次創作は、権利者の許諾や公開しているガイドラインを確認します。個人の趣味、非営利、イベントでの頒布という事情だけで、出版できると決めることはできません。許可される内容や利用方法が、自分の計画を含むかを読みます。
ガイドラインがある場合は、本文だけでなく表紙、作品名、頒布方法、電子配信にも条件がないか確認します。個別に許諾を得たときも、認められた用途を記録します。条件が見つからない場合は、黙認を許可とみなさず、権利者や専門家へ相談しましょう。
公開条件は変わることがあるため、確認日と参照した案内を残します。増刷や電子化で用途が広がるときにも見直します。別の著者が本を出しているという事実は、自分の出版に同じ許諾があることの根拠にはなりません。
表紙の素材と著作者名まで一覧で確認する
写真やイラストを依頼した場合は、表紙、本の中、宣伝、電子版のどこで使えるかを確認します。支払いをしたことと著作権を譲り受けることは同じではありません。加工の可否と、制作者名の表示方法も合意しておきます。
小説をペンネームで発表する場合は、本文の著者名と素材の制作者名を区別します。契約上の本人情報、奥付の発行者、公開する著者名もそれぞれ確認してください。奥付の記事を参考に、表紙と登録情報の表記を揃えましょう。
まずは使用箇所、出典、権利者、許諾の状況を一覧にし、未確認の素材と記述を洗い出します。判断が必要な箇所を絞ってから、権利者や法律の専門家へ原稿を示して相談してください。
