表記の慣行は応募先と出版社の方針に合わせる
表記を揃える目的は、記号や文字の違いに読者の注意を取られないようにすることです。書いている間は、物語を進めることを優先して構いません。完成稿を整える段階で、採用する表記を一覧にしましょう。
ここで紹介するのは、小説で用いられる慣行と確認の観点です。絶対の決まりではなく、応募先の規定と出版社の表記方針を確認してください。応募用の原稿と出版用の原稿で指定が違う場合も、提出先に合わせて整えます。
一覧には、通常の表記に加え、人物の口癖などの例外も書きます。「わかる」を地の文ではひらがなにしても、手紙の引用部分は別の方針にできます。違いを意図していると伝えれば、機械的な統一を避けやすくなります。
三点リーダーとダッシュは形まで揃える
三点リーダーは「……」、ダッシュは「――」と、2文字分を組にする慣行があります。沈黙を示す箇所と、語りを中断する箇所で役割を考えて使います。点や線を長くするだけで感情を説明していないかも読み直しましょう。
中黒を並べたものと三点リーダー、横棒とダッシュは別の文字です。画面では似ていても、縦組みにすると向きや線のつながりが違う場合があります。検索で候補を拾い、使う文字を決めた上で、組版後の形も確認します。
置換は前後を見ながら進めてください。会話の間を示した記号を、単なる誤入力として削ると、話し手のためらいが変わります。統一するのは入力方法であり、その場面に記号が必要かは別に判断します。
閉じカッコ前の句読点と感嘆符はどう扱うか
会話の終わりでは、閉じカッコの直前に句点を入れない形が用いられます。例えば「もう帰るよ。」を「もう帰るよ」と整えます。閉じカッコ前の読点も確認しますが、会話の途中の句読点まで消すわけではありません。
疑問符や感嘆符の後に同じ段落で文が続く場合は、全角空きを置く慣行があります。「本当? それなら待つよ」のような形です。直後が閉じカッコなら「本当?」とし、その間の空白は入れない方針がよく使われます。
「!?」のように記号を重ねるかどうかも、作品内で方針を決めます。会話では強い語調でも、地の文では記号を控えるなどの区別もできます。勢いのある人物だけに使う場合は、その意図を校正時に共有してください。
字下げと行頭禁則は改行の意味と一緒に確認する
地の文の段落頭は全角の字下げを基本とする例があります。カギカッコから始まる会話文を下げるかどうかは、採用する方針を確認します。自動の字下げと手入力の空白が重なっていないかにも注意してください。
句読点や閉じカッコなどを行頭へ送らない処理が、行頭禁則です。原稿の各行を手動改行で調整するより、組版側の禁則処理で整える方が変更に対応できます。段落の切れ目と、画面の幅による折り返しを混同しないようにします。
話し手が替わる箇所や、行動から心情へ移る箇所は、段落を区切る候補です。場面転換の空行は、同じ場面内の読みやすさのための改行と分けます。縦組みにしたときも、その違いが伝わるかを見てください。
数字とルビは読者が読む順番で決める
縦書きだから数字をすべて漢数字にする、と一律に決める必要はありません。地の文の数量、時刻、作中に出す画面表示など、用途を分けて方針を決めます。算用数字を残す箇所は、向きや全角・半角の扱いを試し組みで確認します。
例えば、人物が目にする暗証番号は、その見た目自体が手掛かりになるかもしれません。表記の統一によって、謎解きの条件が変わらないように注意します。数字を含む名前や固有の表記は、通常の数量とは別に扱ってください。
ルビは、難読語だけでなく、人物名や架空の地名の読みを伝える助けになります。初出だけに付けるか、章が離れたら再び付けるかを決めます。特殊な読みは対象語と読みを対にし、入稿原稿の準備で指示方法を整えます。
二重表現を直すときも会話の個性を読む
「あらかじめ予告する」のように、近い意味を重ねた表現は見直す候補です。ただし、登場人物がわざとくどく話す場合まで、一律に削る必要はありません。地の文の説明を簡潔にする作業と、会話の人物像を守る作業を分けましょう。
「彼は扉を開けた」という動作の直後に、同じ動作を言い換えていないかも読みます。繰り返しを削った結果、強調や呼吸が失われるなら別の表現を考えます。声に出して読むと、意図した反復かどうかを判断しやすくなります。
確認を終えたら、記号・数字・ルビと、変更しない例外を表記メモにまとめましょう。そのメモを使い、原稿全体を同じ観点で読み直します。
